家系ラーメンのスープ、お店によって味が違うのはなぜ?

家系ラーメン、スープの味だけでもそれぞれのお店で違いがあります。同じ家系ラーメンと謳っているのになぜ味が違うのでしょうか?

家系ラーメンのスープの特徴

家系ラーメンといえば、豚骨醤油ベースの濃厚スープが主流です。豚骨と鶏ガラをベースに、醤油ダレとチーユ(鶏油)と呼ばれている鶏の皮や脂身を加熱して抽出される動物性油脂を合わせたスープとなっており、こってりしながらもキレがあり風味豊かな味わいが生まれます。

豚骨醤油ベースの濃厚スープ

豚骨を長時間にわたり煮込むと、豚骨の髄から出るゼラチン質や脂などの骨髄の成分が溶け出し、白濁した濃厚でとろみを感じる口当たりの濃厚なスープが作られます。

醤油ダレとチーユ(鶏油)のブレンド

深みのある豚骨スープに、キレのある醤油ダレと、鶏から抽出したチーユ(鶏油)を加えることで、独特の香ばしさとコクを表現することができます。

ダブルスープ

豚骨だけでなく、鶏ガラからも出汁を取って作られるダブルスープを採用する場合も多く、全体のバランスと旨味をより深くすることもあります。

豚骨から溶け出した脂とチーユ(鶏油)がスープの表面に浮かび、コクと深みを与えます。この脂とスープのバランスが家系ラーメンの魅力の一つです。

独特の香り

豚骨スープの濃厚な匂いに加え、鶏油の香ばしさ、醤油ダレの風味が合わさり、食欲をそそる独特の香りを持っています。

上記の要素が絶妙に組み合わさることで、家系ラーメンは濃厚豚骨+鶏ガラのコク+醤油のキレ+鶏油の香りによる豊かな旨味とチーユ(鶏油)の香りによって、多くの人に愛される特徴的なスープになっています。

家系ラーメンのスープが店舗によって違うのはなぜ?

このように家系ラーメンのスープには主流ともいえるデフォルトのレシピがあるにもかかわらず、家系ラーメンのお店によって味の違いを感じるのはなぜなのでしょうか?それにはいくつかの理由が考えられるようです。

味の違いが生まれる背景

家系ラーメンの起源はもともと横浜の「吉村家」といわれています。その後さらに家系ラーメン店が増えていく過程に、吉村家で修行を経た弟子たちが独立して店を構えるといった流れがあります。その際にそれぞれが独自の味を研究・発展させたことにつながります。

また「直系」とそれ以外の店による違いが挙げられます。吉村家で修行し、その味を特に忠実に再現した店が「直系」と呼ばれますが、それ以外の「〇〇家」とつく家系ラーメンの多くは、各店が独自に進化させた味を提供しています。そこに職人のこだわりとして、スープは毎日の気象条件や混み具合によって味のバランスが変化するため、生き物と言われる場合もあります。

各店舗の職人がスープの減り具合やタレ・エキスの濃さを数値で確認しながら、細かい調整をおこなっています。この繊細な調整によって、各店の個性的なスープが生まれるといえるのです。

スープの構成要素と違い

ベース(豚骨と鶏ガラ)

基本的なレシピ以外にベースとなるスープの煮込み時間や材料の配合が店によって異なり、これが味の深みや旨味を左右します。

醤油ダレ(カエシ)

タレの配合や味の濃さが各店で異なり、これがスープの「醤油感」、つまりキレの強さを決定づける要素となっています。

チーユ(鶏油)

チーユの量や香りなどの風味が店ごとに異なり、スープの風味やコク、香ばしさに大きく影響しています。

上記のように家系ラーメンのスープがお店ごとに違う理由には、豚骨ベースのスープ、醤油ダレ、鶏油(チーユ)の3つの要素を、それぞれの店が独自に配合し、独自の作り方をしているためです。

家系といえば「吉村家」がルーツではありますが、弟子たちが独立する際にそれぞれが材料の配合や火加減、タレの味の強さ、油の風味など独自の味を追求することで、各店に個性が生まれることがわかります。

セントラルキッチンの利用

スープにこだわりをもつ店舗がある一方で、セントラルキッチンを利用した家系ラーメンも存在します。セントラルキッチンでは、店舗とは別に専用の施設でスープや具材を大量生産し、各店舗に配送する仕組みで味に一貫性を持たせることができます。

時間、水道光熱費など手間もコストもかかるスープをセントラルキッチンにお任せしている場合には、前者のように日によって味が変わることなく常に一定の味を提供することができます。スープを毎日、一から炊く店舗とセントラルキッチンからのスープを使用する店舗でも味の違いが表れるでしょう。

まとめ

家系ラーメンは、総本山である吉村家のレシピをそのまま引き継いでいるわけではありません。弟子が、それぞれの店舗が、基本的な豚骨醤油ベースのスープに、個性を追求した独自のラーメンを作り上げています。そのため、同じ系統の家系ラーメンでも、各店舗のこだわりが反映されることになるのです。さっぱり系、キレの強い醤油系、濃厚系などさまざまな味わいがあるからこその家系ラーメンといえるのかもしれません。